靴・バッグなど革製品製作に用いる抜き型の製作やCAD/CAM自動革裁断機を用いた裁断加工を行う(有)篠原刃型。親子でもある篠原雄二社長・篠原佳介部長にお話を伺いました。
– 貴社の事業について教えてください
社長:篠原刃型では、皮革裁断用の抜き型製造及び、CAD/CAM自動革裁断機等を用いた裁断を行っています。抜き型とは、革を切り抜くための刃物のことです。抜き型は、革を主に扱う靴屋やバッグ・ベルトなどを製造する店に納めています。また、裁断のみの受注も受けています。
– 抜き型による裁断と自動革裁断機による裁断ではどういった違いがあるのでしょうか
社長:抜き型を用いる裁断は、中ロット以上の場合は有利です。しかし、最近の日本は時代と共に少量多品種生産の流れに移行してきました。そこで、10年ほど前に抜き型を必要としないCAD/CAM自動革裁断機を導入し少量多品種のニーズに対応できるようになりました。CAD裁断の場合Illustratorでのデータ入稿が可能であり、また、抜き型にはできない複雑な図形も切り抜くことができるため、幅広い対応が可能です。ある程度のロットが必要であれば抜き型による裁断を、少量多品種の加工が必要であればCAD裁断をご選択頂けたらと思います。
– CAD/CAM自動革裁断機の導入が一つの転換期だったのですね
社長:そうですね。手仕事である抜き型と、デジタル作業であるCAD裁断は真逆の仕事なので、最初はとても戸惑いました。しかし、息子(佳介事業部長)にレクチャーを受けつつ少しずつ慣れていきました。
その時ちょうど「水で濡らして乾くと固まる性質」と、CADの技術を組み合わせて生まれたのが「レザープラネット」です。「指で作るレザーアニマル」として、動物の特徴をリアルに再現できるこの商品は、平成24年度「TASKものづくり大賞」で大賞を受賞しました。足立区や東京都の後押しもあり、今も好評を頂いています。
-「レザープラネット」はどのようにして生まれたのでしょうか?
社長:「面白いサンプルを作りたい」と考えたことがきっかけです。最初はコースター等を考えましたが、平面に模様が入っているものはいくらでもあります。それだと埋もれてしまうかなと考えました。そんな時、「タンニンでなめした革」の使用を思いつきました。タンニンなめしの革は柿渋等で加工されていて、可塑性という「濡れると固まる」性質があります。その性質をうまく利用して、立体の動物を作ろうと考えました。
現在、種類としては約40種類販売されていますが、実は100種類以上の案があったんです。革は値も張るので当初は大人向けと考えていましたが、お子さんを中心に好評を頂いています。今は東武動物公園や伊勢神宮のおかげ横丁、革雑貨のお土産屋さんなどで販売されています
-これまでに大変だったことがあればお聞かせください。
社長:CAD裁断を導入する過程が大変でした。今までの手作業の技術とは真逆の技術だったので、慣れるまでにかなり試行錯誤しましたね。60歳の時に始めたので、アナログをデジタルに置き換えるのは大変でした。
部長:職人との調整が大変でした。僕は営業としてこの会社に入社したので、職人の感覚がよくわからなかったんです。でも、それぞれの立場があるので、そこを乗り越えるためによく話し合いました。そういう意味でも、親子で働けるのはありがたいですね。
– 仕事をするうえで大切にしていることを教えてください。
社長:篠原刃型は、「地域で頑張っている人たちと一緒に仕事をする場」だと思っています。グローバルに外に出て仕事をしようというのではなく、この地域で靴やバッグを作ろうとする人たちの手助けに専念しています。また、「お客様に魅力を感じてもらえるような企業にしなくては」という気持ちもあります。抜き型を製作しているだけでは、お客様に魅力を感じてもらうのは難しい。かといって価格面の安さを追求するのではなく、抜きや裁断にとどまらない総合的なご提案をするなど、付加価値を持った事業展開を目指しています。
部長:お客様のニーズに合わせた動きをしたいと考えています。「刃型屋だからニーズが生まれる」のではなく、「こちらがニーズに合わせて動いた中に刃型がある」ことが、一番大事だと思います。会社としてのプライドを守るのではなく、最終的に刃型で生きていければいい、という感じですかね。例えば、「何かを作りたいけど、何から依頼していいかわからない」というお客様もいらっしゃいます。そういう「何か作りたい」というある意味で根本的とも言えるニーズをくみ取っていければと考えています。
– 最後に、今後の展望についてお聞かせください。
社長:本業は抜き型製造とCAD裁断なので、その2つを柱にやっていこうと思っています。地に足の着いた仕事として、お客様に魅力を感じてもらえるよう、技術力を高めつつやっていきたいです。レザープラネットについては、息子が新しいものを開発中で、それも面白いなと思っています。革の折り鶴なのですが、作り手により出来ばえが変わってくるこれまでのレザーアニマルと違って、折り方を守れば誰でもうまく作れます。同じ革でもいろんな商品があるので、これからも挑戦していきたいですね。