新旧事業者対談 安心堂 × しまや出版

(株)安心堂,(株)しまや出版

初代会⻑から、新会⻑へ。 ⾜⽴ブランドへの想いを未来に紡ぐ

優秀な技術の宝庫、⾜⽴

⾜⽴ブランドは2021年に14年⽬を迎えました。丸⼭会⻑は、その創設にも深く関わってきたとお聞きしています。

丸⼭:⾜⽴区にはそもそも素晴らしいものづくりのつくり⼿がたくさんおられる。僕も含めて(笑)。

⼩早川:確かに安⼼堂さんの、誰でも、どこにでもパッド印刷ができる技術「なんでもくん」「どこでもくん」は素晴らしいですよね。

丸⼭:そうでしょ? 世界中のどこを探しても同じような技術はなかったんだから(笑)。まあ、それは置いておいて、せっかくいい技術をお持ちの企業があって、素晴らしいものがたくさんあるのだから、これを⾜⽴区の財産にしなくちゃもったいないと当時の産業振興課の⽅にお話ししたことがあるんです。地域の活性化や⾜⽴区のイメージ向上にもつながるということで、⾜⽴ブランドが発⾜した。しかるべく審査を受けて安⼼堂は認定企業第1号になってね。ほかにも鞄やアクセサリーの製造、医療機器メーカーなど、最初は11社からのスタートでした。

⼩早川:それが今や63社にまで増えたんですね。 僕は義⽗の逝去を機に13年まえにしまや出版に⼊社して、それから⾜⽴区で働くことになったのですが、ものづくりをする⼈間にとって、⾜⽴区の取り組みは単純に⾯⽩く、魅⼒的に映りました。知⼈に誘われて⾜⽴ブランドのイベントや出展ブースを訪ねたり、社⻑さんを紹介いただいたりするうちに、⾜⽴ブランドに⼊りたいな……と思って必死に応募(笑)。安⼼堂さんはパッド印刷という特徴をもっていますが、うちは同⼈誌印刷に特化して個⼈顧客向けの特徴的なノウハウを持っていたことを認めていただき、なんとか⾜⽴ブランドに認定されることになりました。今年で8年⽬。まだまだ新参者です(笑)。

そんな⼩早川さんは、会⻑を13年間務めた丸⼭さんの後を継いで⾜⽴ブランドの新会⻑に就任。認定企業の皆さまより選出されましたね。

丸⼭:以前、⼩早川君は「⾜⽴ブランドユース」も⽴ち上げていたね。

⼩早川:若⼿同⼠が互いに切磋琢磨することでより成⻑し、もっと地元の⼒になれたらと考えて5年前に結成しました。その前に丸⼭会⻑に「若⼿の会をやりたい」と相談したんですよね。そのとき何て⾔ったか覚えてます?「おー、作れつくれ!」と⾯⽩がって背中を押してくれたんです。もし、そこで反対されたら実現してなかったかも。

丸⼭:僕は⼈間を古くからやってるから(笑)、 その⼈がどんな⼈か、どんな発想の持ち主か、話しているとだいたい分かる。だからね、僕の次の会⻑に⼩早川君が選ばれたと聞いて、良い⼈がなってくれたな、良かったなと思いましたよ。

ハングリーさとギャップ

初代会⻑と新会⻑のお⼆⼈が考える、⾜⽴のものづくりの魅⼒、そして問題点は?

(株)安心堂 会長 丸山寛治 氏

丸⼭:先ほども申し上げましたが、⾜⽴には素晴らしい技術がある。他にないものを⽣み出す優秀な職⼈がたくさんいます。⼯場数の多さでいうと⾜⽴区は23区のなかで3〜4位、いっときは2位になったこともありますね。

⼩早川:そうですね。それに他区でものづくりをしている⽅たちからよく⾔われるのは「⾜⽴は仲が良い」、「⾜⽴区を盛り上げようとみんなで頑張っている」ということ。⾜⽴ブランドを⾼く評価してくれる⼈が多いです。

丸⼭:確かに、⾜⽴区は⾃分のところだけが売れよう、有名になろうとするより、みんなが区のことを考えて、みんなで盛り上げようとしている。こんなところ、ほかには聞いたことがないよ。

(株)しまや出版 代表 小早川真樹 氏

⼩早川:そこにはある種のハングリーさがあると思うんです。世間的に、⼤⽥区や墨⽥区はすでにものづくりにおいて⼀つのイメージがあるけれど、⾜⽴には残念ながらまだ「⾜⽴=ものづくり」が定着していない。その後ろめたさみたいなものが⾜⽴ブランドとして集結することで、負けてなるもんか、⾜⽴ブランドで頑張ろう、⾜⽴区に還元しようっていう気持ちが⽣まれるんじゃないかと思います。

丸⼭:端から⾒ればすごい技術を持っているのに⾃覚していない⼈が意外と多いんだよね。⾃分の会社のことって当たり前になっちゃうから。それを気づかせてあげるのも⾜⽴ブランドの使命だと思うし、今後はその売り⽅や⾒せ⽅をもっと考えていかないといけないね。

⼩早川:僕としては⾜⽴にものづくりのイメージがないのなら、そのギャップをもっとうまく利⽤したらいいと思うんですよね。3年前にものづくりの⼯場で働く男⼦の写真集『あだち⼯業男⼦』 を出版したんですが、あのときはメディアにものすごく取り上げてもらったんです。それもギャップのおかげだと思いますし。そこをもっとうまくPRできたら。

⾃分を⽣かすことは、⾃分にしかできない

これからの⾜⽴ブランドに対して、丸⼭さんから⼩早川さんに何か願いはありますか?

丸⼭:いやいや、僕からは何もないですよ。⾃分たちが思うようにやってほしい。だって、⼈から⾔われてやるなんて、これほど⾯⽩くないことはないでしょう。僕だってやりたくない(笑)。だから⾃分たちで考えて「こうしよう」ってやるのがいちばんなの。よく⾔うんですが「⾃分を⽣かすことは他の誰でもない、⾃分にしかできない」って。⾃分を⽣きるということをみんなに知ってほしい。それができないようじゃあ、たとえ新製品開発講座に来ても意味がない。⼀緒に勉強して、⼀緒に考えることはするけれど、答えを⾒つけ出すのは本⼈。ときには「いい職⼈なのにもったいないな」「こういうところを⽣かせばいいのに」って思うこともあるけど、僕が⾔っちゃだめ。

⼩早川:⾔わないんですか?

丸⼭:⾔わない。⾃分で気がつかないとね。やっぱり⾃分で考えて、答えを⾒つけて、作り出したときの喜びはほかには変えられないものだから。

⼩早川:丸⼭会⻑の偉⼤さを改めて実感しますね。このあとを受け継ぐのは⾮常に緊張……。これまで築き上げてこられた⾜⽴ブランドの伝統を継承しつつ、新しいエッセンスを加えながら、ニュー⾜⽴ブランドをつくるために頑張ります。

⾜⽴ブランドに誇りをもって

丸⼭:僕は⾜⽴⼈間で、⾜⽴が⼤好き。⾜⽴の悪⼝を⾔ったやつはぶん殴ってやろうと思うくらい(笑)、それほど⾜⽴の⼈間であることに誇りを持っているし、⾜⽴区ならではの⼈⽣に感謝しているの。僕はね、⾜⽴で暮らす⼈々がみな、そんなふうに思ってくれたらいいなと。⾜⽴ブランドはそうした⾜⽴をつくるためにも⼤事な存在。あえて新体制に願うとすれば、⾜⽴区の代表として⾜⽴ブランドであることを胸に、誇りをもって頑張ってほしいですね。期待しています。

※新製品開発講座:区が実施する講座で丸⼭会⻑も講師として登壇

文 葛山あかね
編集協力 吉満明子(センジュ出版)
撮影 金子由

左:(株)しまや出版 代表 小早川真樹 氏 右:(株)安心堂 会長 丸山寛治 氏
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(株)安心堂 丸山寛治

⾜⽴ブランド企業第⼀号、印刷業界の駆け込み寺「安⼼堂」会⻑。「FC⾜⽴」初代会⻑も務める。現在は「あだち新製品開発講座」の講師として活躍するなど若⼿の育成にも尽⼒。そうした功績が認められ、令和2年度⾜⽴区功労者として表彰を受ける。基本理念は「⼈を喜ばす喜び」。

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(株)しまや出版 小早川真樹

同⼈誌を専⾨に扱う印刷製本会社「しまや出版」の代表取締役。コミックマーケット初期より関わる同⼈誌業界で存在感を⾒せる⽼舗企業。「僕達が作るのはお客様の『宝物』」と掲げ、年間8,000件以上の作品に関わる。⾜⽴ブランドの若⼿メンバーが切磋琢磨する場として「あだちブランドYouth」を⽴ち上げ、5年間会⻑を務めた。

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