有限会社篠原刃型のプレスリリースを配信しました

職人技とコンピューターの二刀流で皮革製造を切り開く「篠原刃型」が、新たなスタッフを迎え新年度をスタート。多品種小ロットを必要とするクリエイターを歓迎します!

(本記事は足立ブランド」としてPR TIMESに掲載したプレスリリースの転載になります)

優れた製品・技術を持つ事業者を広く認定し区内外へPRする「足立ブランド」。認定企業である有限会社篠原刃型は、この春新たなスタッフを迎え新年度をスタートしました。

靴やバッグなど皮革製品のパーツに用いる抜き型の製作や、CAD/CAM自動革裁断機を用いた裁断加工を行う『有限会社篠原刃型』。時代の変化に寄り添い、それぞれのロットに合った方法でニッチな道を開拓しています。

皮革製品のパーツを作る抜き型製作で半世紀

千住生まれの千住育ちの『篠原刃型』の社長、篠原雄二氏は昭和25年生まれ。一代でこの『篠原刃型』を築きました。抜き型製造の優れた職人であり、経営者です。

<とても手先が器用な篠原雄二社長>

 

「私の父は製靴会社に勤めていた関係で、『これからの時代“型屋”は儲かる』と父の助言もあり、独学でこの仕事を始めました。日本の製造業も上向き、どんどん物が売れ大量生産される時代、昭和54年に29歳でこの会社を創業しました。」

靴の足の部分や、バッグのパーツ、腕時計のベルトの形を型で抜くための金属製の「抜き型」を生産しています。

「“抜き型”とひと言で言っても、靴やバッグ、ベルトなど色々なパーツを作る型を来る日も来る日も作ります。多彩なパーツ、そのバリエーションの多さが飽きることなく、ものづくりのモチベーションに繋がってきました。それによって技量もどんどん磨かれ、ますます作る楽しさが広がっていきます。抜き型は鍛冶屋の仕事が派生したもの。決して機械化できない長年の経験と卓越した技術で紙型によって正確に歪みなく金属で忠実に再現する職人仕事です。

『篠原刃型』の抜き型は、スウェーデン鋼という金属を使った抜き型を作っています。

「この金属は刃物としては切れ味鋭く、耐摩耗性に優れている一方で、溶接や抜き型に最も大切な“曲げ”などの2次加工がしやすい点から抜き型として優れた材質です。

スウェーデン鋼抜型は、曲げの技術が特に重要です。曲げ作業は職人の手作業で行われ、機械化のできない工程なのですが、30数余年、クレーム無く、高い評価を頂き、この地で営業できた事を誇りに思っています。」

<スウェーデン鋼抜型は、曲げの技術が特に重要。職人の手作業で行われ、技術力が問われます>

 

好景気の時代には大量生産のものが飛ぶように売れ、何人もの職人を抱え、抜き型もどんどん作られました。しかし、時代は移り変わり大量生産全盛期は終焉を迎えます。

<様々な形状のオリジナル抜型>

 

抜き型は大量生産には向きますが、小ロットには向きません。今は個人のクリエイターがデザインや製作をする小ロットの時代。職人の高齢化もありました。最盛期10人いた職人も今はひとりしか残っていません。ニュースを見ても好景気に大量生産の商品を並べて売っていた有名なスーパーのチェーンなどは苦境に立たされてどんどん撤退しています。

こうした動きはどんどん加速しているのです。創業して約40年、すっかり時代は様変わりしました。その一方で、物価がどんどん高騰している時代に、職人の工賃は50年前からほとんど上がっていないのも問題です。」

時代の転換期にいち早くCAD/CAM自動革裁断機を導入

少ないロットでは採算が合わず、抜き型製作のみに頼るのに限界を感じてきた篠原氏は、英断せざるを得なくなります。

その頃、他の会社で営業をしていた息子(現・篠原佳介事業部長)が平成24年に入社。その息子からの助言もあり、多品種小ロットの自動革裁断が可能なスイス製のCAD/CAMシステムを導入することを決断します。

<スイス製のCAD/CAMシステム>
<CAD裁断で実際に紙型を切ろうとしているところ>

 

「抜き型による裁断は、中ロット以上の注文には向いています。しかし今は、先ほども申し上げた通り、個人クリエイターによる少量多品種生産の流れに移行しています。CAD/CAM自動革裁断機ではこの少量多品種の小ロットのパーツのニーズに対応できるようになりました。

CAD/CAM裁断では、パソコン上でIllustratorで設計データを入稿し、また、職人による抜き型にはできない複雑な図形も切り抜くことができるため、幅広いリクエストに対応することができます。

お客様の要望で、ある程度のロットが必要なら抜き型による裁断、少量多品種の加工が必要であればCAD/CAM裁断を、と選択の幅を広げることができるようになりました。一概には言えませんが目安としてパーツ100個以下か、以上かが分岐点となり、お客さまへの裁断方法の提示の基準となります。」

60歳を超えてからの挑戦に自らを鼓舞奮闘

熟練した職人によるアナログな抜き型と、デジタルを駆使したCAD/CAM裁断はどちらも靴などのパーツを作る裁断手段には違いありませんが、ある意味仕事内容としては全く違うので、最初は戸惑ったとのこと。篠原佳介事業部長にレクチャーなどを受けながら、今では作業に必要なCADをすっかりマスター。CADを使いコンピューター上で設計図面を作り、CAMにデータを送り裁断指示を出すのもお手の物です。

15年前に始めたこの裁断方法は、この業界でほかに行なっている会社はなかった先駆者です。そして今も、こうした方法を用いて裁断している同業者はいないそうです。

<60歳を過ぎてCADをマスター!!>

 

パソコンのことはそれまで全く知りませんでしたが、60を過ぎてから練習してデジタルを使った作業を覚えました。今では、問題なく扱うことができます。」

篠原社長は抜き型も最初はほぼ独学でマスターしたということ。時代がアナログからデジタルに変わってもコツコツ学習して覚えることに秀でているのかもしれません。進取の気性や考え方の柔軟さで、昔も今も変わらぬ果敢な挑戦が『篠原刃型』を支えているのです。

<年齢や時代を言い訳にしない姿勢に、頭が下がります。>

 

“伝統”と“テクノロジー”を両手(もろて)に掲げ足立ブランドへ挑戦

こうしたCAD/CAMを使い、オリジナル開発で誕生した商品があります。タンニンなめし(現在はクロムなめし)の革の水で濡らして形状を作り、乾くと固まる性質を利用した「レザープラネット」です。

「指で作るレザーアニマル」として、動物や恐竜を革でリアルに再現できるこのアイテムはものづくり企業の新しい挑戦を競う「TASKものづくり大賞」で見事平成24年度の大賞を受賞しました。これがマッチングクリエイターの方の目に留まり、数年を経て「足立ブランド」への参加に繋がったのだとか。

 

 

「せっかく新しい技術を導入したのだから、何か面白いサンプルを作りたいと考えたことがきっかけでした。最初はコースターなどを考えましたが、平面に模様が入っているものはインパクトに欠けます。そうして革の選定などしている時に、濡れると延びる性質のある馬のヌメ革をお客様が持ってきてアイデアが浮かびました。タンニンなめしの革には可塑(かそ)性という「濡れると固まる」性質があります。その性質をうまく利用して、立体の動物を作ろうと考えました。」

その後、 100種類以上の試作から約40種類を商品化し、東急ハンズなどで販売。カラフルでリアルな革の動物シリーズはマスコミにも広く取り上げられ、たちまち話題に。

<驚くほどリアルな動物たち!!販売終了が悔やまれます>

 

「子供にも人気がありましたが、おもちゃには厳しい規格がありましたので、当初はものづくりに興味がある大人の方向けに開発しました。実際、外科のお医者さんなど手先が器用な人が購入されていると聞きました。けれど、この商品を使ったワークショップなどを開いてみてわかったことなのですが、どうやらうまく作るのが結構難しいようなんですね。

私としてはリアルにすればするほど喜んでももらえるのではないかと開発しましたが、一般の方が製作するは、筋肉の盛り上がらせ方などなかなか難しくうまく作れないことも多いようで、動物にしてももっとデフォルメしたものにすればよかったかな……というのが反省点のひとつです。」

<篠原さんの手は革に命を宿すゴッドハンドなのです!!>
 

結局、周囲の人気や好評な意見とは裏腹に、残念ながら販売を終了してしまったそうです。次は何を作ろうかと考えている時、革の折鶴を考案しました。こちらもなかなか好評だと聞いています。紙と違って革は厚みがあるので折り目には半分だけ切れ目を入れる“半メス”など、皮革加工の技術の工夫をしてその粋を込めたアイテムです。

これからの時代を担うクリエイターと共に

「現実問題として弊社の今後は、CAD/CAM裁断が主流となっていくと思います。今年から小型の部品やパーツを抜き型で”抜き出し”裁断する油圧式クリッカーの加工も、去年から基本的にお受けするのをやめました。加工中機械につきっきりにならなくてはならないためタイムパフォーマンスが良くないのです。」と篠原社長。

これまで広い工場に5人のスタッフで回していた『篠原刃型』にとって、効率を重視することが最優先でした。しかし今年度は新たな作業スタッフを迎え、新たな展望も見えてきました。

<油圧式クリッカーの加工は休止>

 

これから篠原刃型の進むべき道とは? と篠原社長に問うと……。

「今後は若いクリエイターの出発点としてCAD/CAM裁断は絶対に必要になってくると思います。靴で例えれば、以前は一足を抜き型10万円、20万円の初期投資をして開発していたところを3万円、4万円で作れるようになるわけです。クリエイターのみならず、ある程度の規模の専門店でも10足、20足程度の需要もあるわけです。そうした多品種小ロットの時代に、この裁断方法は最適です。ですから当面は廃れることはないと確信しています。だからと言って規模を拡大する予定もありません。ニッチな需要を適正な工賃で続けることがいいと思っています。理解して付いてきてくれるお客様も増えています。

<CADで革を裁断し作った表札>

足立ブランドの会社としては? という問いかけに

「足立は以前より製靴会社をはじめ、皮革製品などを作っている会社が多いですよね。足立で行政に恥じない存在感のある会社になりたいです。それには新しいクリエイターが出てきて、一足作れば10万円というような高付加価値が付く高いデザインを期待しますし、少しずつそうしたクリエイターも出てきています」

ワークショップなどで社会貢献もしたいと言いますが、今は誰も手付かずの事業の推進が急務。未来を見据えた篠原社長の正念場。その気迫を感じました。

<靴やバッグを作りたい、皮革製品に興味のあるクリエイターの皆さま、どうぞ気軽にお問合せください>

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企業情報
有限会社篠原刃型
http://yu-factory.com/
会社名:有限会社篠原刃型
住 所:東京都足立区千住緑町3丁目2-2
電話番号:03-3881-0716
代表者:篠原 雄二
事業内容:スウェーデン鋼刃各種製造

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取材など掲載情報に関するお問い合わせは、「足立ブランド」の運営事務局でもある産業経済部産業振興課ものづくり振興係でも受け付けております。

産業経済部産業振興課ものづくり振興係
電話番号:03-3880-5869
ファクス:03-3880-5605

足立ブランド公式Webサイト
https://adachi-brand.jp/