「日本人にしかできない仕事」と世界に認められた金属加工「深絞り」の技術。優れた技術と斬新なアイデアで、他社に断られた加工を成功に導く職人集団。加工が難しければ難しいほど歓迎します!
(本記事は「足立ブランド」としてPR TIMESに掲載したプレスリリースの転載になります)
■世界から注目されるきっかけとなった、八角形の製品
ステンレス板でできた、箱型の製品。縦と横は165㎜、深さは122㎜の大きさで、角がわずかに丸くなった八角形。これは一体、何なのだろう……と思ってしまうこの製品には、実は世界でもトップレベルといえる金属加工が施されています。
この製品は、原油の輸送管(パイプライン)のための計測器ケースで、大手計測器メーカーが株式会社ナカザへ製作を依頼したもの。そのメーカーは18社ものプレス加工会社に製作を断られ、最後に頼った先が同社だったのです。
その依頼は、図面を見ただけで職人がひるむような、金属加工においてかなり難しい技術が必要な設計でした。同社でも何度も試行錯誤を繰り返し、一度は諦めかけたものの、2年をかけてようやく製作に成功しました。
この計測器ケースの加工に施されているのは、「深絞り」という金属加工の手法です。もともとナカザは深絞りの技術に定評がありました。その技術を活かして、40年前に日本で初めてハイブリッドカーの燃料電池ケースを製造した実績も。開発力と匠の技を組み合わせ、日本産業界をリードしてきました。
発注元のメーカーは、この計測器ケースをヨーロッパの展示会に出展。「世界でも類を見ない優れた技術」「日本人にしかできない仕事だ」と絶賛されました。
ナカザはこの計測器ケースをきっかけに、深絞りの加工技術において、日本だけでなく世界でも高い評価を得ることになったのです。
■深絞りとは、どんな技術?
金属加工における「絞り」とは、一枚の薄い金属板を金型で挟み、圧力をかけ、角筒、円筒などの形状に加工することをいいます。溶接などと異なり金属のつなぎ目がなく、強度のあるなめらかな仕上がりになることが特徴です。絞りの中でも「深絞り」とは、ある一定以上の高さまで深くのばす手法を指します。
深絞り加工には、次のようなメリットがあります。
・金型を用いるため、同一の製品を大量に生産できる。
・溶接などの二次加工がないため、コストが削減できる。
・他の加工手法と比べてコストが安い。
・全く新しい発想の製品を実現できる。
メリットが多い一方で、デメリットも。深絞りは金属加工の中でも特に難易度が高く、熟練の技術と知識が必要とされます。機械と金属のバランスが悪いと、金属にしわができたり破損したりすることもしばしば発生するのです。
細く長く絞っていく加工には何度もプレスを繰り返す必要があります。下の写真は、右から左へと順に、深絞り加工を行っていった様子です。
■ ナカザの深絞り加工の実績とは
難易度の高い深絞りを得意とするナカザには、国内のさまざまなメーカーから複雑な加工の依頼が頻繁に持ち込まれます。最近では、その評判を聞いた海外メーカーからの依頼を受けることもあるそうです。
これまで同社が手掛けた、深絞りの技術を活かした製品の一部をご紹介します。
◯世界最小、最軽量の双眼鏡
大手メーカーからの発注により製作。薄くて軽い素材を深絞りの技術によって加工し、世界最小で最軽量の双眼鏡に仕上げました。
同様の製品を皇室からも求められ、納品した実績もあります。
◯ハイブリッド自動車用燃料電池ケース
深絞りによって楕円形に加工した、燃料電池ケースです。
深絞りは一般的に丸い筒型に加工することが多く、楕円や角筒などは「特殊形状深絞り」と呼ばれます。円筒にするよりも難易度が高い技術です。ナカザでは、楕円や角Rの他、3D形状の物まで、さまざまな形状の深絞り加工が可能です。
◯眼鏡用測定器
非対称の形に加工する必要があり、金型の製作は困難を極めました。曲げ加工に適したSPCCという素材を採用し、複雑な形状の加工に成功しました。
◯医療用体温計の先端品
外径が2㎜、内径が1.8㎜と非常に繊細な部品です。使用したステンレス板の薄さはなんと0.2㎜。高度な技術と加工の知識がなければ実現できない製品です。
◯チタン材の深絞り
チタン材は、耐食性・軽さ・強度の高さ・高い電気抵抗などメリットが多く、優れた材質として知られていますが、一方でその加工は非常に難しいとされています。同社では、絞り加工の際の油の配合などを工夫することで、チタン材の深絞りに成功しました。
■ 代表は元営業マン。「知らなかった」からこそ生まれたアイデア
ナカザの代表、中座義行氏は茨城県の出身。21歳で上京し証券会社の営業マンとして働いていましたが、あるプレス会社の社長との出会いをきっかけに、1966年、個人事業としてプレス加工を始めました。
「プレスについては何も知らず、もちろん技術もなかった」という中座氏。周辺のプレス会社へ営業に行きがてら、様々な知識や技術を教えてもらったそう。
無理難題にも果敢に挑戦することができたのは、プレスだけに携わってきた熟練職人ではなかったことが関係しているのかもしれません。冒頭でご紹介した八角形の計測器ケースも、異業種から参入したフレッシュな発想があったからこそ、成功につながったのではないでしょうか。
同社では他にも、従来は1000円以上かかるとされていた燃料電池向けの部品に別の加工法を応用することで、数十分の一のコストに抑える手法を生み出した実績もあります。また、従来は8つの工程があった作業を3工程に減らすなど、加工時間の短縮も実現。
このような技術と功績が評価され、2002年には東京労働局長より進歩賞を受賞、さらに2011年には東京都の「東京マイスター」にも認定されました。
「創業から40年、景気の悪化や、倒産の危機に見舞われることもありましたが、経営が苦しい時にもリストラだけは選択せず、全社員と一丸となって取り組んできました。素晴らしい社員に恵まれたことは、一生の誇りです」と語る中座氏。謙虚に研究を重ねた熱意と、社員を含めかかわる人とのつながりを大切にしてきた姿勢が、事業を成長へと導いたのでしょう。
プレス業界の既存の概念にとらわれることなく、次々と新しい開発に取り組む同社が、これからも日本のものづくりの現場をけん引してくれることが期待されます。
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企業情報
株式会社ナカザ
https://www.nakaza.com/index.html
会社名:株式会社ナカザ
住 所:東京都足立区宮城1-23-7
電話番号:03-3911-0166
代表者:中座義行
営 業 品 目
金属深絞り加工/精密自動金型設計製作/金属プレス加工/板バネ加工/ 各種表面処理(塗装・めっき・アルマイト・アロジン)/試作板金加工/量産板金加工/ 各種溶接/タップ・スポット加工/組み立て加工一般/日用雑貨取り扱い生 産 品 目
自動車部品/電子機器部品/精密機器部品/人工衛星部品/建築金具/重電機器部品/組立て加工一般
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