最小径2mmの極小濾過装置の世界。さまざまな機械や工業プラントで使用される金網フィルターを手掛ける足立ブランド認定企業・ジャパンフィルターが家庭用の茶こしを開発。
(本記事は「足立ブランド」としてPR TIMESに掲載したプレスリリースの転載になります)
■なんと最小径2mm、超小型の金網フィルターの世界
冒頭の画像を見て、なんの商品かお分かりになるだろうか。
金属で出来た網のように見える、という点は皆さん異論が無いところで、「強いて言うなら幾つかの商品は茶こしに見える」という回答が一番多いのではと予想する。
しかし、横に置いてある定規を見ると、これらの茶こしは最大で直径が2cmぐらいしかない。
最小で直径2mmの製品も存在しているのだとか。
殆どの人はこういう商品があることすらご存知無いであろう、これらは「金網フィルター」「メッシュフィルター」「ストレーナー」「金網ストレーナー」「パンチングストレーナー」などと呼ばれている商品だ。
茶こし同様、この形状なので、主に「何かを濾過する」ことに利用される。
自動車、建設機械、農業機械、医療機械や工業プラント・生活インフラなどその利用シーンは多岐に渡り、機械における液体や気体の通り道に設置され、そこを通り抜けようとする固体(ゴミ、スラッジ、夾雑物など様々な名称で呼ばれる)を文字通り「濾し取る」ことを目的とした精密部品だ。
この超精密茶こしとも言うべき金網フィルターを作るプロフェッショナルが、今回紹介するジャパンフィルター株式会社(以下、ジャパンフィルター)である。
微細・精密な金網加工を得意とし、この分野に特化した高い技術力で最小径2mm、図面公差(図面上で設計者が指示した誤差の許容値)0.05mmを誇る。
実際に、ジャパンフィルターが主力とする製品群がどれほど小さいものなのか、定規を横に置いた画像といっしょに幾つかサンプルを見ていこう。
先ほど書いた通りジャパンフィルターが製造できる金網フィルターの最小径は2mm。これでも最小サイズではない訳だが、複数のパーツが組み合わさって作られていることが信じられないほど小さい。これらの金網フィルターはメッシュ状の抜き絞り加工と口金(スリーブ)をプレスによるカシメ加工で接合することで作られているという。
利用シーン的にメッシュの抜き絞り加工が難しい場合は、口金がカシメ加工で付けられているところまでは同じだが、このように筒状の片側を四つ折りして溶接することで「底」を作る。
高圧がかかる環境下で使用する場合は、口金(スリーブ)部分にツバを設ける。必要に応じてメッシュを重ねることで強度が出るのだとか。
もちろん、素材は金属だけではない。この画像のようなナイロンメッシュや、金属メッシュと樹脂成型品の組み合わせ製品も製作が可能だ。
■「技術」をムラがあるホームランのような言葉にしない、企業としての取り組み
今回「金網フィルター」の実例だけをほんの少しご紹介したが、「金網ストレーナー」「パンチングストレーナー」などの製品例・加工例もホームページには豊富に掲載されている。一見してわかるのは、自分たちの製品に必要なフィルターが一体どのタイプなのか、自分たちではなかなか正解を見出せそうに無い、ということだ。
お客様が「この機器に必要な最適なフィルター」の正解を保持していない。図面が存在しない。
そうすると、当然打ち合わせや営業活動の大半は「提案型営業」となる。
営業が顧客の要望を汲み取って提案する力と、その提案を製品で実現する技術力がモノを言う世界。提案力に優れた営業マンが取ってきた無理のある仕事で納期に追われて工場が疲弊する、利益率が悪化する。高い製造技術をもった職人はいても、その技術が企業として継承されない。
ジャパンフィルターも、かつてはそんな日本中に数ある「技術力は高いが収益性にムラがある」ものづくり企業のひとつだった。
転機となったのは、異業種から家業へ飛び込み、2016年に二代目社長へ就任した木村真有子氏の存在だ。まず最初に取り組んだのは、「技術の共有と見える化」。全従業員からの聞き取り調査ですべての技術とすべての製造プロセスを自社マニュアルと社内工程表にまとめ、見える化を実践した。
続いて、ここで見える化した技術を従業員全員が「各自どこまで習得できているか」「この先にどのようなスキルアップがあるのか」を同じく見える化した「スキルマップ」を作成。
ここで一気に多能工化が進み、社内の技術がボトムアップされたのだとか。
先ほど書いたような提案型営業に従事する営業マンと製造部門のコミュニケーション不足によるトラブルを回避するため、顧客との打ち合わせは必ず営業担当と製造担当がペアで実施する体制を整え、顧客や協力企業との共存共栄を目指して価格の適正化や納期調整にも果敢に挑戦するため、2021年には「パートナーシップ構築宣言」を実施している。
また、店舗で市販されている商品では無いため、こうした微細・精密な金網フィルター製造で最も重要になるのが品質管理だ。自社の品質方針を明文化し、「品質マニュアル」も作成してすべての業務が自社で製造する製品の品質向上と品質維持を目的に遂行されるようになっていった。
これら改善の積み重ねと品質向上の結晶として、2022年には品質マネジメントシステムに関する国際規格である「ISO9001」認証を取得。
現在ではさらに進んで図面や関連データ、ノウハウなど「この顧客のことはこの職人しか知らない」といった属人化の原因になりがちな製品に係るすべての情報を一元管理するクラウドシステムも導入。かつて属人性の高かった同社の技術は「ジャパンフィルター」という企業の技術として保持・向上が図れるようになっているとのこと。
並行して地元・足立区より「ワーク・ライフ・バランス推進企業」として最高ランクの認定を受け、技術と品質管理と働きやすさを兼ね備えた企業として、日々一体感と誇りを胸に業務に取り組んでいるジャパンフィルター。
2020年にはこうした高い技術が評価され、「足立ブランド」認定企業に。足立ブランドとして出展する見本市では、会場の地図と自社の図面を抱えて相談のためにジャパンフィルターの展示ブースを訪れる企業が跡を絶たず、まさにオンリーワンの技術と提案力が評価されていることが見て取れる。
精密で表からは見えないような商品を高い技術力とMade in Japanの誇りを持って作り続ける、まさにものづくりの街・足立区を代表するものづくり企業である。
話を聞いていると、ひとつひとつの取り組みが非常にシンプルかつ明快で、もちろん達成にあたってはひとかたならぬ苦労があるのだろうが、一本筋の通った価値観、悩むことに時間を掛けるのは無駄、とにかくやってみよう、という非常に気持ちの良い社風のようなものが感じられる。
■BtoC商品も開発、自社ブランド「LOKA」の取り組み
ここまで見てみると、高い技術力と品質管理力を持つ企業であることはわかったが、こうした工業用の金網フィルターに全く縁が無い、という方も多いだろう。
ジャパンフィルターが面白いのは、こうした完全なBtoB製品ばかりを手掛けながら、一般家庭で使えるようなアイデア商品もしっかりと自社の技術を活用して製造、自社ブランドまで立ち上げている点だ。
自社ブランドはその名も「LOKA」。
「濾過する」という金網フィルターの特性をそのままブランド名にした形だが、先ほどまでの工業用金網フィルターのイメージとは打って変わって、しっかりと洗練され作り込まれた商品コンセプトが存在している。
CHAKO
これまで市販の茶こしでは見たことが無い市松模様に金網フィルター製造企業としての矜持が感じられるのはもちろんのこと、「コロンと転がらず、自立する形状」など、ただ「同じ金網フィルターが転用できるので茶こしを作った」のではない、商品そのものへの考察と工夫が感じられる。
UMEKO
第二弾の商品「UMEKO」に到っては、もうフィルターすら使用していない。
梅干しサワーや焼酎のお湯割りに梅干しを入れて愉しむ際、「梅の果肉を一気につぶして、種を取り除く」ことに特化して開発されたマドラーである。卵や味噌、ドレッシングなども混ぜられるということだが、「梅干しサワー専用マドラー」と言われると使い道がニッチ過ぎて逆に面白みが感じられる、独特の商品だ。
実際に使ってみると、上から軽く押すだけでバネのような螺旋部分がするっと梅干しに食い込み、種だけを綺麗に取り出すことが出来た。そして、最初は「別に梅干しサワーの梅は種を取らなくてもそのままつついて果肉部分を潰せば良いのでは」と思っていたのだが、「種を取った梅干し」が種有りのそれよりも遥かに「潰しやすい」ことに驚かされる。
なるほど、これまで意識していなかったが、これは確かにお酒を飲む際のストレスだったのだなと思わせる工夫が、そこにはある。
梅干しサワーや焼酎お湯割り梅干し入りをこよなく愛する方には、ぜひお試しいただきたい。
中ジョッキの底まで届くLONG(約22cm)と、お湯割りに最適なSHORT(18cm)をラインナップ。もちろん、夏と冬で使い分けるのも良いだろう。
なんとジャパンフィルターではこの「UMEKO」を使って梅干しの種を取るタイムを競う社内イベントまで開催。優秀者には表彰状まで渡す力の入れようだ。
こうして全員で楽しみながら自社商品やものづくりへの興味を平等に高めていくのがジャパンフィルター流ものづくりの秘訣なのかも知れない。
ひとつ気になったのは、筆者はチェーンの居酒屋で梅干しサワーを注文してこの「UMEKO」を試したのだが、飲食店特有の大きな角氷がジョッキを満たしており、ジョッキの底にある梅干しにまでUMEKOを届けるまで、少しコツが要るように感じた。
お店に持ち込んで使うにはオーダーの際に氷を少なく、とリクエストする必要がありそうだ。
そんな疑問を「UMEKO」を貸して実演させてくれた木村社長にぶつけてみると、極めてシンプルな答えが返ってきた。
「家で使えば良いでしょう。普通飲食店にこんなの持ってこないんだから」
「あなたがヘタなだけかも知れないから、もう一回試してみてください」
やはり解決策がシンプルで、明快。
氷なし、そしてなぜか濃いめでオーダーされた梅干しサワーと共に、不純物がすべて濾過されたような爽やかさと、金網フィルターを知った時と同じような絶対的な自社の技術への自信が感じられた。
困難な技術課題を抱えている時ほど、爽やかな風が吹く企業に問題解決を託したい。
そうお考えになる方は、ぜひ一度ジャパンフィルターに提案を受けてみて欲しい。
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企業情報
ジャパンフィルター株式会社
https://www.japan-filter.co.jp/
会社名:ジャパンフィルター株式会社
住 所:東京都足立区大谷田4-16-9
電話番号:03-3606-1161
代表者:木村 真有子
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ファクス:03-3880-5605
足立ブランド公式Webサイト
https://adachi-brand.jp/