プラスチック製品の企画・開発から完成品までの一貫生産を行うミユキ精工(株)。かつて全国の子どもを熱狂させた自動車玩具は、同社が設計・製造を担当しました。満を持して開発した自社製品「リポブロック」は、表現自由度の高さから、全国にファンが広がりつつあります。小暮社長にお話を伺いました。

 ー プラスチック製品のOEMが御社の業務の柱と聞きましたが?

ミユキ精工(株) 小暮孝一 社長

自動車や医療機器、AV機器などの部品製造や玩具のOEM生産もやっています。有名なゼンマイ式自動車玩具は、弊社も開発に携わり、現在まで製造も請け負っています。

 ー 長年OEMに携わってきた御社が、自社製品を開発したきっかけは?

弊社は1986年に創業しました。私は、2001年に創業者の娘と結婚したのを契機に入社し、成形・組立の生産現場での下積みを経て、2015年に代表取締役に就任しました。長年OEMを続けてきたわけですが、ここ数年徐々に新規案件の受注が減り、月産の生産量も減る状況の中で、このままだと将来が不安であり、自社の軸となるものがもうひとつ欲しかった。社長就任を契機に新機軸を打ち出したかったこともあります。そこで、社内に自社製品づくりに関する議論の場を設けました。

カラフルな立方体ブロックを5種類のジョイントでつなぎ合わせて形を作るブロック玩具「リポブロック」で作ったティラノサウルス

 ー 「リポブロック」のアイデアは社内から生まれたんですね

「自社製品とはいっても、さて何を作ろうか」ということになって、まずは社内で検討する場を設けました。その場で、ある設計担当社員から「ブロックはどうだろうか。既存のブロックでは上下左右に連結するものはあるが、斜めに連結するものはない」といった提案がありました。その提案をベースに、斜めに連結する方法を検討すると同時に、「国内で作れるものにしたい」「色付けすると値段が高くなる」「ブロックであれば素材のまま使える」などと社内での議論を重ね、現在の形になったんです。

15mm角の立方体ブロック(キューブ)(左)と5種類のジョイント(右)

 ー 玩具開発・製造のノウハウが活かされたということですね。ところで、改めて「リポブロック」とはどんな製品なんですか?

15mm角の立方体ブロック(以下キューブ)と5種類のジョイントからなるブロック玩具です。キューブは6面すべてにジョイントを挿せる構造です。ジョイントは、挿した後360度回転できます。これにより、既存のブロック玩具では困難な曲線を造形することができ、形ができた後もパーツを動かすことができるため、より自由な表現が可能となりました。キューブは、基本色となる赤・青・黄・緑・白・黒の6色の他、全12色で彩られています。自由な発想で直感的に組み立てられ、ひらめきや創造力を養い、知性や感性を育むのにとても効果がある、100%メイドインジャパンの知育玩具です。対象年齢を5歳以上として子ども向けと捉われがちですが、大人の方にも楽しんで頂ける玩具です。

「リポブロック 4つの特徴」(公式ホームページより)
「ティラノサウルス」「カマキリ」「トリケラトプス」「カブトムシ」の他、よりパーツの数が多く、自由な造形が楽しめる「ベーシック300」が商品化されている

ー 玩具とはいえ、発想によってはいろいろな使い方ができそうです
算数や理科などの授業で使えるのではないかというご意見もいただきます。また、雑貨や大人向けのホビー、内製インテリアなどのニーズもありそうです。もっと多くの方に体験していただき、これまでにない使い方を発見していければと思います。
リポブロックで、動物などの形を作り上げるのはもちろんですが、ブロックにジョイントを挿したり抜いたりする行為そのものも楽しいんです。ああでもないこうでもないと考えながら指先を使うので、脳を刺激し活性化させる効果もあります。この観点から、子どもの知育だけでなく、まだ元気な高齢者の頭の体操にも役立つのではないかと考えています。知恵の輪のように、日常生活の中で「手すさび」のツールとして使っていただくのもおすすめです。

 ー なるほど。最初に何も考えていなくても、ブロックとジョイントをつなげる行為を繰り返すことで何らかの形になる、そこからさらに発想を広げられそうですね。これは粘土いじりの感覚に近いかも…。

そうかもしれません。正解はないので、好きな形を自由に作っていただければいいんです。「ティラノサウルス」「カマキリ」などの製品は、とくに子どもたちを対象にリポブロックを体験していただくために商品化したものです。その形を作った後は、ばらして違う形にするのもいいし、大人の方にはよりパーツの数が多く、より自由な発想を広げられる「ベーシック300」もおすすめです。ちょっとした実用品を作るのもいいかもしれませんね。
また、親が子どもにものづくりの楽しさを教えるツールとしても最適だと思います。

 ー 大人でも十分に楽しめそうな製品ですね。リポブロックと御社の将来をどうイメージしていますか

現在、リポブロックの販路がある程度確保できたとはいえ、知名度はまだ全然です。より多くの方に知ってもらい、体験していただけるよう努めていきます。この1〜2年はまず足立区内で知名度を高めていき、5年後には全国どこのお店にもリポブロックが置いてあるという形にしていきたい。学校などでも使っていただければうれしいですね。新しいモデルを開発し、商品力を高めると同時に、遊び方を教えて手にとってもらうといったPR活動が重要になってくるでしょう。
リポブロックが広がれば、生産体制を強化するため、雇用を拡大する必要が出てくる。そうなれば地元に恩返しもできます。精一杯がんばっていきます。

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ミユキ精工(株)代表取締役 小暮孝一

1975年生まれ。土木系専門学校卒業後、建築会社に入社。土木施工管理技士として土木工事現場で5年間活躍。2001年、ミユキ精工(株)社長令嬢との結婚に合わせ同社に入社。2015年に代表取締役就任。幼いころ、竹を切って凧や船、水鉄砲などを作って遊んだ。「祖父からものづくりの楽しさを教わった。今の子どもたちもゲームやスマホばかりでなく、ものづくりにも親しんでもらいたい」。リポブロックの開発に至ったのには、こうした想いも強かったという。 *リポブロックの公式ホームページはこちら。家電量販店や一部大手スーパー・書店などの店舗や各種ECサイトで販売しています。

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