足立ブランド

認定企業インタビュー

(有)大塚竹管楽器

祭りを彩る和楽器「篠笛」を作る、(有)大塚竹管楽器。伝統を守りつつ、ニーズに応じた新製品開発やネットでの販売、ショールームの設置など、新たな挑戦にも積極的に取り組む大塚社長にお話を伺いました。

(有)大塚竹管楽器の紹介ページはこちら

▶創業から現在までの沿革を教えてください。
(有)大塚竹管楽器インタビューの様子1

(有)大塚竹管楽器 大塚敦 社長

弊社では代々、お祭り等で使用される「篠笛」を製作してまいりました。初代は、私の祖父の義理の兄に当たる中村甚五郎(じんごろう)です。大正3年に、江戸時代から伝わる「獅子田流(ししだりゅう)」の笛師、新山氏に弟子入りし、10年間の修業を経て、大正13年に獅子田流の印を押すことを許され、当社の前身「中甚(なかじん)」を立ち上げました。その後祖父の伊東忠一が継ぎ、3代目父義政と受け継がれ、2014年に私が4代目を継承しました。

▶「篠笛」とはどんな楽器なのでしょうか。
(有)大塚竹管楽器インタビューの様子2

篠竹で作られる横笛<篠笛>

篠竹で作られる横笛のことで、古くから祭のお囃子や神楽、獅子舞・長唄などで使われてきました。近年では、洋楽器と合わせて演奏されることも増えています。弊社では、用途に応じた3タイプの商品、「古典調」「邦楽調(唄用)」「洋楽調(ドレミ調)」を製造販売しています。洋楽調(ドレミ調)については、30年くらい前に問屋さんから要望が来て、作り始めました。ドレミに合わせるためには、調律が必要です。徐々に改良しながら今の形にしてきました。また、「邦楽調(唄用)」は、長唄をはじめ民謡やわらべ唄など日本に伝わる多くの曲を演奏するのに適した篠笛です。昔からある種類なのですが、いつのまにか「ドレミ調」と混同されるようになっていたんです。「本来の伝統を残さねば」と思い、弊社では今年から販売を始めました。


※補足:現在普及している音楽の大部分は、西洋音楽のシステムで作られている。一方、日本の伝統音楽のシステムはこれと大きく異なる。お囃子(はやし)を基本とした日本古来の音階を奏でる「古典調」、長唄や民謡等で三味線と合わせるために昭和初期に開発された「邦楽調(唄用)」、西洋音楽での使用も可能な「洋楽調(ドレミ調)」という3つのタイプは、時代のニーズに合わせ、より広い分野で使われる楽器へと進化してきた過程を示しているものといえる。

▶販売はどのような形で行っていますか?


平成28年から始めた工房併設型のショールーム店舗

従来は和楽器の問屋や小売店との取引が多かったのですが、先代が20年くらい前からネット販売を始めました。当時ネット販売はまだ珍しかったのですが、一般のお客様のニーズを知るためのマーケティングとして始めたんです。そこで得た情報をもとに新製品を作るなどしていたのですが、ネット販売が増えてくるにつれ、「実際に吹いてみてから買いたい」という方も増えてきました。そういった声に応えるため、平成28年から工房併設型のショールームも始めました。実店舗を出すことで、お客様に実際に触って吹いてもらい、お客様の声を直接聞くことができるようになりました。その場でメンテナンスのお悩みを聞いてコツをお伝えするということもあります。また、今はネットショップで買う方も増えてきていますね。

▶篠笛の魅力とはどういったものなのでしょうか?


お祭りでどこからか篠笛の音が聞こえてくると、「お祭りかな?」とわくわくしたり、懐かしく思ったりしますよね。先日、「東京楽器コレクション」というイベントで洋楽器とコラボ演奏したのですが、その時のお客様を対象にしたアンケートでも、篠笛は「懐かしい」「わくわくする」という回答が多く、日本人の遺伝子に刻まれている音という感じがします。このように人の感情を動かす音が出せることが篠笛の魅力だと思います。

 

 

▶篠笛メーカーとしての強みは?

 

種類の多さですね。お祭りに携わる方は「目立ちたい」「かっこいい笛で吹きたい」と、人と違うものを探す方も少なくありません。そのため、いろんな種類があることで、お客様の選択肢が広がります。江戸時代からの「獅子田流」を継ぎつつ、技術を体系化して他では真似できないオリジナルの篠笛を考え、売り出しています。昔ながらの型の笛でも、1本調子~12本調子まで作っており、全モデル80種類くらいあります。10年前に「1年に1種類ずつ新しいモデルを作ろう」という目標を立てたのですが、1つモデルを増やすだけでもかなり大変なんです。1つのモデルに対して1本調子~12本調子があり、6つ穴と7つ穴があり、ドレミ調も作るので。結局、1つモデルが増えると実際には48種類増えます。それを毎年、ほぼ1モデルずつ新しく考案しています。そのことが全国に広まり、ご好評を頂いているようです。

 

 

篠竹を炎であぶり、曲げていく
先代 大塚義政氏

 

▶篠笛を作るうえでのこだわりを教えてください。

音が合っているのは当たり前で、そのうえで品物自体もきれいでなければダメですね。
また、製造の過程で何年も寝かせているので、通常だと割れたりしないのですが、お客様の管理の問題で乾燥しすぎたり、空調の風が当たったりすると割れてしまうこともある。お祭り開催日の前日に、「篠笛が急に割れてしまい、明日使うものが欲しい」というお客様もおられました。ですから、最短納期を心がけています。

 

 

 

▶篠笛メーカーとして、どのようなことを大切にしていますか?

もともと「獅子田流」というブランドがあったので、それをどう育てるか、宣伝するかということをずっと考えてやってきています。昔ながらの伝統も守らなければいけませんが、それだけではなく、時代に合わせて新しいこともしていかなければならない。例えば、お祭りでは笛の奏者が高揚した際に笛を取り違えやすいという話をヒントにして、笛にレーザーで名入れするサービスを始めました。また、Tシャツや笛袋などの周辺アイテムを作ったりもしています。このような取り組みを含め、伝統を作っていくんだ、という意識は常に大切にしていますね。

 

 

▶今後さらに取り組んでいきたいことは?

篠笛の文化の創造・発信です。これからももっと新しいものを作っていけたらと思っています。また、老舗ということから、伝えていかなければいけないことがたくさんあります。例えば、若い世代だと篠笛の材料が何か知らない。プラスチック製の横笛と混同してしまう方も多いんです。良い物を作るため、材料の選別にも相当にこだわり、腐心しているのですがそのことが十分に伝わっていない。それは実際、私たちの発信力が足りないということでもあります。伝統に関する誤った認識が定着しないよう、業界の文化・未来を、様々な発信方法で正しく伝えていきたいですね。

 

四代目(社長)と三代目(右・父)

 

■(有)大塚竹管楽器 代表取締役社長 大塚敦 氏
1978年生まれ。高校を卒業後、1996年に(有)大塚竹管楽器に入社。2014年に代表取締役社長に。伝統を守るだけでなく業界の革新にも力を入れ、篠笛界の次世代ホープとして業界をけん引している。