認定企業インタビュー7

(株)ビーファクトリー

大型モニュメント、オブジェ等を企画から保守まで一貫して手掛ける(株)ビーファクトリー。芸術家の育成に資する活動として、ギャラリー「いりや画廊」の運営も行う中村茂幸社長にお話を伺いました。

 ー どのようなことを手掛けていらっしゃるのでしょうか?

株式会社ビーファクトリー 代表取締役 中村茂幸 氏

例えば、東京ミッドタウンの「フラグメントNo.5」のような大型モニュメントを作家さんと制作したり、経年劣化したオブジェを修復して保守したり、若い芸術家と建築家や評論家の皆様をはじめとする様々な分野の方々をつなげるギャラリー「いりや画廊」を運営したりしています。

フラグメントNo.5/東京ミッドタウン(港区六本木) 作家:フロリアンクラール

これらを弊社の3つの理念「創造る(つくる)」「保守る(まもる)」「接点る(つなげる)」で表し、事業を行っています。企画から保守までを一貫して請け負っている会社は珍しく、そこが当社の強みと言えます。

「創造る(つくる)」の例としては、東京ガーデンテラス紀尾井町の「Echoes Infinity~Immortal Flowers~」というモニュメントの制作が挙げられます。最初は8センチの紙の模型を3Dスキャンし、3Dソフトでモデリングし設計するところから始めました。

左から「大巻氏による模型」「CTスキャナによる3Dスキャン」「スキャンデータよりモデリング」

大型モニュメントを制作する時は、意匠性を保ったまま構造物として成り立つよう、柱や梁(はり)を複雑に組み合わせて構成し、何度もテストします。安全性や、組み立ててどのように見えるのか、実際に立つのかという点ですね。また、作品が移設された時のことを考え、基礎部分は取り外しできるように制作しています。

モニュメントを構成するパーツ同士の仮組の様子
東京ガーデンテラス紀尾井町の「Echoes Infinity〜Immortal Flowers〜」 作家:大巻伸嗣

 ー 「保守る(まもる)」という理念はどういった事業に繋がるのですか?

茨城県ひたちなか市にある笠松運動公園の「笠松の女神像」

「保守る(まもる)」の例として、茨城県ひたちなか市にある笠松運動公園の「笠松の女神像」の修復施工実績があります。酸性雨による緑青(ろくしょう)の流出で全体的にまだらになっていた箇所や胴体の破損で落下の危険性すらあった高さ5mを超える彫刻作品を、工場で引き取り修復しました。お腹の部分を外して胴体内部をステンレスで補強し、溶接部分がわからないように色付けして仕上げています。

 ー 自社で作られているモニュメント以外も修復されているんですね。

修復・保守は得意分野の一つです。東日本大震災の時には、著名な作品を含む多くの作品が破損してしまいましたが、それらを何十点と修復しました。また、パブリックアートが傷んでいる事例が多くみられるため、「修復」については保守の必要性の啓蒙とあわせて、今後力を入れていきたい分野です。

 ー 「接点る(つなげる)」は「いりや画廊」の運営、という事ですね。

「いりや画廊」の入り口

はい。個展・グループ展・イベント等を行っており、主に立体の作品の展示を行っています。2013年に開業しましたが、構想二十数年、念願の事業でありました。

「いりや画廊」の内観一部

昔、神田に「ときわ画廊」という画廊がありました。立体の大型作品を展示できた事もあり、私自身、何回か個展を開催していました。このときわ画廊には「若い作家の発表の場」という側面がありました。そこが閉鎖される事になった時に抱いた「なんとか同じような場所を作れないか」という想いが、立体中心のギャラリーである「いりや画廊」のオープンに繋がります。立体中心のギャラリーなのに「画廊」なのは、「ときわ画廊」から名前をとったためです。日本では珍しく、企画画廊・貸し画廊、どちらの営業も行っていて、訪れる建築家や評論家の皆様をはじめとする様々な分野の方々と若い芸術家との交流の場となっています。

 ー 名前と言えば、社名にも何か由来があるのでしょうか?

はい。この社名は、クラーク博士の「Boys, Be ambitious!」の「be」から来ています。私は若い頃、美大受験で浪人もしていたため、仕事を始めた年齢がわりと遅かったんです。仕事を始めた当時はアルバイト的な制作の仕事や、高校の教師を週1回やる程度だったため、収入も少なく「もう少しちゃんとやらなきゃ」という気持ちが強くありました。 そうした中、ものを作る事業をやっていこう、やるなら前向きにいこうと思い「やるぞ!」という気持ちを込めて、当社がスタートしました。

 ー 仕事で大切にしていることを教えてください。

他の作家さんの作品はもちろん、私自身も作品を作っています。これら全ての作品を手がける際、「手を抜かずに、徹底的にいいものを作る」というところを大切にしています。気持ちが流れていってしまうとダメになるので「適当でいいや」ではなく「ぎりぎりまで作っていこう」というところにこだわりを持っています。そのうえで皆が気持ちよく仕事をしてくれれば、一番いいですね。

 ー 今後の展望についてお聞かせください。

設計部門で3DCADを扱う様子

「一級建築士事務所」という看板を掲げていることもあり、設計部門で3DCADを自由に動かせる人材をもっと増やしていけたらと思います。制作部門についても、もう少し若い人達も入れていきたいので、一緒に働いてくれる方、募集中です。ものを作るのが好きな人で、美大を出ている方だと尚良いです。

今の当社の強みは、企画・制作・保守まで一貫してやっているため、クライアント様と直接やりとりしてコストを抑える事ができる点です。一貫している分、透明感のある取引ができるので安心感もあり、お互いにメリットは大きいですね。

企画・製作・施工・保守まで当社で手掛ける東京タワートップデッキのジオメトリックミラー /デザイン:KAZ SHIRANE

この強みを活かしつつ、今後は「ビーファクトリーに頼めば、良心的な値段でいいものを作って、保守までしてくれる」と言われるような、アートにおいての総合会社を目指していきたいです。

 

■株式会社ビーファクトリー 代表取締役 中村茂幸 氏
1956年生まれ。東京藝術大学彫刻科を卒業後すぐ、モニュメント制作業を開業。2011年に法人へ。2013年には、念願の芸術家育成に資するギャラリー「いりや画廊」を台東区北上野に開廊。企画から保守まで手掛ける一貫した制作体制は、他に類を見ない。

2018年12月7日更新

ADACHI BRAND FROM TOKYO
Copyright © Adachi-city
All rights reserved.