足立ブランド

認定企業インタビュー

(有)AKASHIYA

エキゾチックレザーのバッグ・革小物を製造販売する(有)AKASHIYA。メンズアパレルデザイナーだった社長が、企画から縫製・仕上げまで一貫して手がけるブランド「METALSTIC(メタルスティック)」は、その強い個性に魅入られたファンを数多く生み出しています。林﨑社長にお話を伺いました。 ※エキゾチックレザーとは、ヘビ革・ワニ革などの爬虫類皮革やダチョウ革・サメ革など希少性の高い皮革の総称です

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▶御社の「METALSTIC」には、洗練されたセンスと強い個性がうかがえますが、製品づくりの方向性はどのようなものでしょうか?
(有)AKASHIYAインタビューの様子1

(有)AKASHIYA 林﨑誠一 社長

「多くの人に支持されるもの」ではなく、オリジナル性のあるものを好むお客様に向けたものづくりをやっています。遠くから見て誰が作ったバッグかがわかるような、いわば人に語りかけてくるようなものを作るのが目標です。
今までの国内エキゾチックレザー製品は、若い方からは敬遠されがちなんですが、デザイン性を高め遊びの要素を入れることで若い方でも持てるようなものになるんです。

▶「METALSTIC」は、社長の審美眼とデザインセンスが存分に活かされているんですね。もともとは服飾デザイナーだったとのことですが?
(有)AKASHIYAインタビューの様子2

「こんなバッグを大人の女性に持ってもらいたい」という想いで製作したパイソン(ヘビ革)のクラッチバッグ。シャイニングレッドの発色が際立ち、ゴージャスでちょっとワイルドな印象を醸し出している

文化服装学院を卒業した後、メンズアパレルブランドの世界に入りました。帰宅は深夜が当たり前で、肉体的には大変でしたが、デザイナーとしての実力が認められ、タレントのステージ衣装やライブ衣装、海外アーティストからのデザインオーダーなどを手がけたり、有名人と知り合える機会も多く、この業界で生きていること自体が誇りでした。

▶バブル時代の好景気で日本全国が浮かれていた、まさにDCブランド全盛期にデザイナーとして活躍されたんですね。その後は?

自分の力を試してみたいという想いがあり、6年経って独立したんですが、無名のフリーランスデザイナーとしての活動はさんざんなものでした。やがて展示会ディスプレイのデザイナーとして什器(じゅうき)のデザインやオブジェ製作の仕事を手がけるようになったんです。

▶ファッションデザイナーから空間デザイナーに転身したんですね

デザイナーとはいっても、オブジェや什器を職人さんと一緒に作ったり、現場に搬入したりする、いわば裏方仕事です。オブジェのめっきが間に合わない時に、工場でめっき作業を手伝ったりもしました。こうした経験を通し、金属や金属表面処理などの知識が身についたんです。
ある日、搬入作業時に百貨店内のバッグ小物売場で、海外ブランドにそっくりなバッグや小物が数多く展示されているのを目にしました。その時、「海外の模倣製品でなければ売れないのだろうか」と疑問を持ったのがきっかけで、この世界に興味を持つようになったのです。

 

 

自社ブランド「METALSTIC(メタルスティック)」。デザイン性を高め、遊びの要素を入れることで、若い人でも使えるエキゾチックレザー製品となっている

 

 

▶紆余曲折を経て今に至っているというわけですね。ところで、製作は全部おひとりですか?

ひとりです。たとえば、パイソン(ヘビ革)のクラッチバッグの場合、集中して2日に1個できる程度です。平ミシンしかないので、通常腕ミシンでやる工程は全部手縫いです。時間はかかりますが、細かいところ、見えないところが全部見えるので、この方がいいんです。

以前、試作品を縫製職人に依頼したことがありましたが、望んでいるイメージとは違うものができあがった。外形はともかく細かなディテールがまったく異なっていたのです。細かな指示書を作り、綿密な打ち合わせをしたのに、どうしてこうなってしまったのか。

結論から言うと、その職人さんは量産物が専門で、試作品を作るのに向いていなかったということ。量産品は、複数の職人が裁断・ファスナー取り付け、ポケット取り付けなどを分業で行います。一方、試作品専門の職人はパターンから縫製・仕上げまで一貫してひとりで制作するんです。
「量産品の職人がだめならば、試作品専門の職人に頼めばいい」ということになるのですが、彼らは大手資本と年間契約しているためこうした仕事は受けられない。いずれも後でわかったことなんですが。
そうなると、製品の細部まで目配せするためには、「自分で作るほかはない」という結論になりました。まず皮革用ミシンを購入して、縫製を一から独学で学び、全部ひとりで作るようになったんです。
利益ばかりを重視するなら、こんなやり方ではやれない。僕のやり方を見て、「身を削っているかのようだ」という人もいますが…。でも時給計算をやりだすと、本当にいいものは作れませんからね。
製品価格はどうしてもやや高額になりますが、購入してくださるお客様にはこうした点もご理解いただいているのだと思います。

 

 

縫製技術は独学で習得。通常、腕ミシンが必要となる細かな工程はすべて手縫いで行う。業界の常識を逸脱した自由な発想が同社の強みでもある

 

 

パイソンの長財布とカードケース。同社ではこの他、キーケースやメガネケースなどエキゾチックレザー製革小物を多数製造販売している

 

 

「METALSTIC」立ち上げ当初に手がけた爬虫類革と金属を融合させたメタルクラッチバッグ。ステンレスのベースは溶接・研磨加工で金属職人が仕上げた。過去の経験で得た金属加工への知見が活きた同社ならではの逸品

 

 

▶博多織とのコラボ製品もあるとか

足立ブランドとして出展した「インテリアライフスタイル2016」で、やはり出展者だった、博多織の(株)黒木織物さんに声をかけていただいたのがこのコラボのきっかけでした。770有余年の歴史を持ち、自社工場で主に伝統的な和服の帯を織られている老舗です。お話してみると、博多織の伝統を継承しつつ、「世の中にない新しいものを作りたい」ということで、僕が考えるものづくりの方向性と同じだったんです。3日間の展示会期間中に、お互い意見交換の時間はたっぷりあったので、コラボするアイテムやデザインコンセプトまで決めることができました。その早さに僕自身びっくりでした。
「本当に自分で作りたいものがある」人と出会え、いいものを一緒に作り上げるのは楽しいですね。

その後、年末に試作品第一弾の完成、デザイン・仕様修正を経て、2017年4月に日本橋三越本店で開かれた博多織新作品評会で「KUROKI・ORIMONO✕METALSTIC」を発表しました。「和装にもタウンユースにも使用できる斬新な商品」として新聞にも掲載され、2017年8月には上海の国際展示会「日本精品展in 上海2017」にも出展しました。

 

 


(株)黒木織物が企画した博多織の生地を採用したパイソン使いのコラボ製品。和のモチーフを活用することで、和装でもタウンユースでも使える良さがあると好評。巾着袋(左)と博多織小物(右)

 

 

▶ファンも増えつつあるようですね

製品を購入されたお客様が、お友達に紹介してくださるケースが多いですね。「自分だけのバッグを持ちたい、だけど一点物を作ってくれるところがない。ネットで探しても、なかなか見つけられない」というお話をよく聞きます。うちは、お客様の指定する場所に実寸大の模型をお持ちして、仮の革を当てて持ってもらったりしながら、お客様のお好みをお聞きし、それに合わせた製品づくりも行っています。こんなにこまめな対応をする業者はそういないんじゃないかと思います。

百貨店で、お客様個々のご希望に沿った一品物の受注も始めています。店舗にはサンプルを並べ、革の色や加工法などをお客様がオーダーできるというものです。足立ブランドの企業である(株)東洋皮革さんとのコラボで実現できました。

 

 

▶AKASHIYAは今後どんな方向に進んでいくのでしょうか

お客様が製品を購入し、箱から出す時の「にこっ」「きらっ」となる表情をイメージしながら、一針一針縫って作っています。作るのに何十時間かかっても、お客様の喜びがはじけるその何秒かを想像することが楽しみなんです。お客様は僕のことを、職人とかデザイナーとかではなく、「私のものを作れる人」と見てくれています。うちの強みを活かすため、今後はよりお客様に寄り添ったものづくりを考えていければと思います。

 

 

 

(有)AKASHIYA 代表 林﨑誠一 氏
栃木県鹿沼市出身。文化服装学院を卒業後、有名メンズアパレルブランドのデザイナーとして、内外の著名アーティストの衣装デザイン・製作を手がけるなど、6年間精力的に活動。フリーのファッションデザイナーを経て、展示会ディスプレイなどを手がける空間デザイナーに転身。2013年、同社を設立し、「METALSTIC」を立ち上げた。なお、社名は実家の洋品店「アカシヤ」に因んでいる。
*「METALSTIC」の製品は、小田急百貨店新宿店やマルイ錦糸町店などの店舗や同社のECサイト「BASE-METALSTIC」でも販売しています。

 

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2019年7月31日更新